地主様向けお役立ち情報

【弁護士に聞く】地代交渉の進め方

今の地代が相場より低いと分かったら、次はいよいよ地代交渉です。

 

ところが、いざ交渉する段階になると、その手続きが分からず、次のステップに進めないことが多いものです。

 

地代交渉はどのように進めればよいでしょうか?そこで、地代交渉に精通する弁護士にお話しを伺いました。

【YouTubeでも解説!ぜひご視聴ください】

(取材協力)弁護士 森下欣文(もりした よしふみ)先生 日本橋MY法律事務所 登録番号41274 第二東京弁護士会所属

(聞き手)不動産鑑定士 三原一洋

 

【最初にするべきこと】

三原 地代交渉において、最初に地主様は何をするべきしょう?

 

森下 まずは配達証明を付けて内容証明を送ることです。

 

三原 通常のお手紙だとダメですか?

 

【内容証明の効果】

森下 ダメではありませんが、配達証明を付けての内容証明の方がよいでしょう。

 

なぜなら、法的には、地主が値上げを請求すれば「直ちに地代の額が変更」されることになります。

 

配達証明を付けての内容証明は、いつから変更したかを示す証拠として有効です。

 

通常のお手紙だと、届いてない、手紙の内容を忘れてしまったなど借地人が値上げの時期を遅らせようとしたり、交渉を引き延ばしたりする可能性があります。

 

三原 なるほど。「直ちに地代の額が変更」とは、もし請求額を支払ってもらえない場合、借地人に契約違反を追及できるのですか?

 

森下 いいえ。お互い賃料の合意ができるまで、借地人は従前賃料を払っていれば契約違反になりません。合意により金額が決まれば、最初に請求した日に遡って値上げが開始します。

 

三原 では、配達証明をつけて内容証明を送付してから具体的な交渉をはじめればよいのですね。

 

森下 はい。借地人とお会いしたり、電話やお手紙などで話し合います。

 

三原 それで折り合いがつかなければ?

 

森下 裁判所の調停制度を利用します。

 

【調停について】

三原 調停というと裁判所の手続きですね?なんだか敷居が高く感じます。

 

森下 調停は、地主と借地人の間に裁判所が入って話し合う手続きです。裁判官1名と調停委員2名、主に弁護士や不動産鑑定士の専門家が担当します。

 

三原 弁護士に依頼しなくても自分でできますか?

 

森下 裁判所の関わる手続きですので、弁護士に依頼される場合が多いのですが、訴訟と比べて調停の手続きは簡単です。弁護士に依頼せずに申し立てることもできますし、現にそうしている方も少なくありません。

 

三原 裁判所には一般の方に向けて手続きを説明する窓口も設けられているのですね。そういえば、私どものクライアントの地主さんもおっしゃっていました。調停のことで裁判所に問い合わせしたら案外と丁寧に教えてくれたと。

 

森下 ただし、調停は平日開催されますので、平日お休みをとれること。それと調停の場で、自分の意見をしっかり主張できることが必要です。

 

三原 比較的時間に余裕がある地主様も多いので、平日の開催は大丈夫でしょう。問題は、自分の意見をうまく伝えることができるか、ですね。

 

森下 調停では、話し合いなので厳密な法的説明までしなくてもよい場合もあります。何かしらの根拠をもとに調停委員に「見直し後○年経っているので、この金額にしてください」と言えればよいのです。ただし、むずかしい案件は弁護士に依頼する方がよいでしょう。

 

三原 わかりました。その他に注意すべきことはありますか?

 

森下 値上げの根拠があるか、ですね。不動産鑑定士の意見などが必要です。

 

三原 しかし、正式な鑑定書を作成となると、だいたい50万円くらいかかります。費用対効果が見込めない場合も少なくありません。

 

森下 何かしら金額の根拠は必要です。但し、ケースバイケースですが、調停委員が資料をもとに簡易に地代を算出して、「このくらいで折り合いをつけませんか?」と積極的に提案してくれる場合もあります。

 

三原 なるほど。あと気になるのは、調停の場において、借地人と直接面と向かって話すことはありますか?

 

森下 調停の場では、通常、お互い対面することはありません。別室に呼ばれ、それぞれが自分の意見や資料を出し合ったりします。

 

三原 調停にかかる期間はどの位ですか?

 

森下 案件によりますが、概ね1年位かかると思ってください。調停は、通常、1ケ月半~2ケ月毎に話し合いの場を開催します。お互いに意見や資料を出し合うのに3~4回、折り合いがつくまで、1~2回必要です。そうすると1年位はかかります。

 

双方の意見や資料を出し合ったら、お互いの了承があれば調停委員から「○円の金額でどうですか?」と提案されます。これを調停案と言いますが、ほとんどの場合この調停案が出てしまえば、その金額に合意するかしないかの2択です。調停案の内容について、交渉したり反論したりする余地はほとんどありません。

 

三原 合意できなければ?

 

森下 訴訟の手続きに持ち込みます。

 

三原 訴訟になると弁護士のサポートが必要でしょう?

 

森下 裁判所で決められた煩雑な手続きや書面の提出が必要となりますので、やはり弁護士への依頼が必要でしょう。

 

【弁護士費用について】

三原 弁護士費用が気になります。

 

森下 弁護士費用は、通常、着手金と成功報酬がかかります。事務所によって異なりますが、主に二つの計算方法があります。一つは、簡単な目安として賃料差額の7年分×20%を報酬合計とし、うち3分の1を着手金、残り3分の2を成功報酬と考えるといいと思います。

 

三原 なるほど。しかし、その計算だと、賃料差額が小さいと、弁護士さんとしても報酬が低くなりすぎませんか?

 

森下 たしかに賃料差額が少ないと弁護士費用と業務内容が見合わないこともありえます。その場合、おおよそ、着手金20~30万円、成功報酬はその倍額程度を考えるといいと思います。なお、これらは一応の目安です。無論、ご依頼いただく案件の難易度によって異なります。

 

【最後に賃料交渉のポイントを教えてください】

森下 適正な地代相場に関する資料を準備することです。それと、自分で判断せずに信頼できる専門家を見つけてアドバイスを仰ぐことです。

 

三原 今日は貴重なお話をありがとうございました。

 

 

 

まとめ(編集後記)

いかがでしょうか?地代交渉に必要なものは、正しい知識と地代相場の把握です。とはいえ、知識や調査力を自分で養うことも必要ですが、それには膨大な時間と労力を要します。また、実務経験が乏しいと、思わぬ失敗を招くことも少なくありません。

地代交渉を成功させるためにも、専門家のアドバイスが必要なのは当たり前といえるでしょう。ここでご紹介したアドバイスをぜひ参考にしていただければと思います。

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