裁判所鑑定まとめ|継続地代の差額配分法
最近の裁判所で採用されている継続地代の不動産鑑定書において、差額配分法がどのように計算されているか調べてみました。
かなり専門的な内容ですので、詳しい方に向けた内容になっていますが、一般的な読者の方にも分かるよう出来るだけ読みやすく説明します。
継続地代の裁判所鑑定 差額配分法まとめ
判例検索サービスのウエスト・ローを利用し、令和以降に判決がでた裁判例をまとめました。
検索できた裁判例を1件ずつ読込み、その中から裁判所鑑定によるデータのみを拾っています。
なお、裁判所鑑定とは、裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定書のことです。通常、裁判の中で当事者双方の言い分が出尽くして、議論が煮詰まったタイミングでおこなわれます。
これに対して私的鑑定とは、当事者の一方が選任した不動産鑑定士による鑑定書のことです。一方当事者の主張として提出されるので、鑑定に際して資料やヒアリングなどの前提条件が偏るため、鑑定結果は当事者の一方に寄りがちになる場合があります。
ちなみに、物件所在地は東京都内が中心なので「借地権の取引慣行」がある地域内のものが中心となっています。
PDFデータはこちら → 継続地代の裁判所鑑定 差額配分法調べ20231031
出典:ウエストローより弊所にて取り纏め。2023/10/31時点
考察
まとめ表から分かることは、下記の通りです。
1.基礎価格は更地か底地か?
基礎価格とは、継続地代を計算する際の基礎となる価格のことです。
この価格を更地価格とするか借地権価格を控除した底地価格とするかについては、不動産鑑定業界では昭和の時代から議論されています。
今回の調査結果では、基礎価格に更地ベースとした鑑定書は抽出された案件のうち78%(27件中21件)でした。
(考察・コメント)
基礎価格を更地価格ベースとする鑑定書が比較的多いようです。とはいえ底地価格だからダメと断言できないと思います。
2.期待利回り
(更地を基礎価格とした場合)
0.7~1%台が目立ちます。
(底地を基礎価格とした場合)
3%くらいの率
(考察・コメント)
期待利回りは、更地を基礎価格とした場合は低く査定され、底地価格とした場合は高くなっています。いずれを採用しても結局は期待利回りで調整されているのが実態と言えそうです。
ただ、今後の金利上昇局面において期待利回りが1%前後だと読者の納得感は得にくいかもしれません。
3.配分方法
(更地を基礎価格とした場合)
2分の1,3分の1,5分の1,7分の1,10分の1などマチマチ。
(底地を基礎価格とした場合)
2分の1
(考察・コメント)
更地を基礎価格として採用される場合、新規賃料の算出が高額になり過ぎるため、配分率で調整される傾向にあるようです。
最後に
継続地代の差額配分法についてはさまざまな議論があります。
個別案件によって考え方も違ってきますので、当事務所からのコメントは差し控えます。
裁判所鑑定ではこうなんだ程度の参考になれば幸いです。
以上