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「家なき子」相続税対策の失敗例

相続税を少しでも安くしたいのは、課税対象者であれば誰もが思うもの。しかし、相続税対策を行う際は、将来の税制改正の可能性も検討しておいた方がよいでしょう。改正が見込まれる対策は、無駄な出費を招くだけです。時には、相続税対策を見送る判断も必要です。
ここでは、地主様であれば誰もが関係する小規模宅地等の特例を活用した相続税対策の失敗例をご紹介します。
 

小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例とは、実家を相続するとき、その土地評価額を8割減額できる税制優遇のことです。
適用を受けるためには、実家を受け継ぐ相続人がこの特例上の「家なき子」といわれる要件を満たす必要があります。
「家なき子」とは、相続税法上の通称用語で、親と同居していなかった持ち家のない子どもをいいます。
要するに、持ち家のない子どもが実家を相続する場合には、相続税が安くなる制度のことです。
 

意図的に作り出した「家なき子」
この特例が適用される効果は大きく、遺産総額(評価額)が相続税がかかってくる金額のボーダーライン以内(相続税の基礎控除額)に収まり、相続税がゼロになる場合もあり得ます。
そこで、これを逆手にとった相続税対策が横行しました。
例えば、形式的に自宅を親族が経営する会社に譲渡したり、身内に贈与したりなどして、意図的に持ち家のない状況を作り出すのです。
売買当事者が親族同士となる場合の売買価格は、不動産鑑定士の鑑定評価額をもとにするため、私たちの事務所でも手掛けたことがありました。
 

「家なき子」封じの税制改正
ところが、平成30 年度税制改正大綱により、平成30 年4 月以降の相続発生分からは、そのような対策は無効となりました。
相続開始前3年以前に一定の親族や特別の関係のある法人が所有する家屋に居住したことがあったり、過去1度でもマイホームを所有したことがある場合は、「家なき子」の対象外とする規定が新たにもうけられたためです。
 

まとめ
この税制改正によって、不動産の名義変更費用、会社の設立費用、贈与税などが結局のところ無駄になった方が少なからずいます。
このような相続税対策には、税務署も目を光らせています。相続税対策は、正攻法をとりたいものです。