実例紹介・お客様の声
当社に寄せられた数多くのお客様の声の中からいくつか厳選して実例としてご紹介いたします。
Vol.5雑種地と宅地の等価交換(節税と銀行融資)
不動産というものはなかなか難しいものです。特に税金が絡むからやっかいです。譲渡すれば譲渡所得税、登記を移転するときには登録免許税、所有していれば固定資産税に都市計画税と。むろん脱税するつもりはありませんが、できれば節税したいと思うのは誰でも同じでしょう。今回、問題になったのは譲渡所得税です。
私は、祖母と2筆の土地を共有していました。この2筆の土地は隣接しており、一方は駐車場で地目(土地の用途)は雑種地、もう1つの土地は宅地で、そこに建つ家に私は住んでいます。この家が古くなったので、新築しようと考え、宅地を担保に融資を得ようと、銀行に申込みました。ところが、融資を断られてしまったのです。
まず、宅地が共有だということです。私の持分2分の1に抵当権を設定した場合、抵当権が実行されて競売になったとしても、他人と共有になる土地を競落しようという人はいません。だから、担保価値がないというのです。そこで、祖母の持分にも抵当権を設定することも申し出ました。しかし、祖母は既に99才という高齢で返済能力はなく、また、祖母の持分についてはそう遠くない時期に相続が生じる可能性があり、そうすると祖母の持分を複数の相続人が共同相続するということもありえます。そうなると権利関係が複雑化することになるので、祖母の持分も一緒に担保にする案も受け入れ難いというのです。
困った私は、知人に紹介された不動産鑑定士さんに相談しました。さすがは専門家というべきでしょうか。担保にしたい宅地の祖母の持分と、隣地の駐車場になっている雑種地の私の持分を交換して、駐車場を祖母の単独所有、宅地を私の単独所有にすればどうか、と提案されました。そうすれば、宅地は私の単独所有になるので、銀行も融資をしてくれるに違いありません。すぐに銀行の担当者に連絡して訊いてみたところ、単独所有なら問題ないとの返答を得ました。さっそく、私は不動産鑑定士さんに、必要な手続きをお願いすることにしました。
ただ、ここに税金の問題があったのです。宅地の祖母の持分と駐車場の私の持分を交換するといっても、土地の権利を移転するのですから、それは土地の譲渡ということになり、譲渡所得税が発生するというのです。その額は、譲渡した土地の価格の2割にもなります。それだけの額を現金として支出することは難しいと言わざるを得ません。
しかし、こうした場合には、免税特典があるというのです。共有関係にある土地を担保に融資することを銀行が断りましたが、単独所有の土地であれば担保にできるわけです。つまり、共有の土地を単独所有にするのは土地の担保価値を有効に利用すること、ひいては、土地の有効活用にとって必要なことなのです。大袈裟な言い方をすれば、こういったケースで杓子定規に譲渡税を課していたら土地の有効活用が妨げられ、国土が荒廃してしまうというわけです。ですから、土地の有効活用促進という目的のために、持分の交換によって土地を単独所有にする場合、一定の条件を満たせば譲渡所得税につき免税特典が与えられるのです。
この免税特典を受けるための条件は、いろいろとあるのですが、私のケースで一番問題となったのは土地の用途、つまり「地目」です。免税特典を受けるためには、交換前と同一の用途に供しなければならないという条件があります。あくまでも宅地として使用するには、交換した土地も宅地でなければならないというわけです。ところが、交換する土地の一方が駐車場で「雑種地」、もう一方が「宅地」なのです。土地の用途は「地目」として不動産登記簿に登記されています。駐車場の土地の地目は「雑種地」、宅地の地目はもちろん「宅地」ですから、駐車場の地目を交換前に「宅地」に変更しておかなければならないのです。この辺りの調査や手続きも不動産鑑定士さんにお願いしました。
私と祖母の土地は住宅地にあります。周辺にもかつて雑種地と登記されていた駐車場が、現在では宅地として家が建っている土地があります。そうしたことを調査してもらい、周辺の土地利用状況からしていつでも建物が建てられる土地であったとして、雑種地から宅地に地目の変更登記を行い、税務署から免税措置を受けることができました。
こうして免税措置を受けて祖母の持分と私の持分を交換し、私の家が建つ土地は私の単独所有となりました。無事銀行から融資を得られ、新築工事に着工することができました。不動産鑑定士というと、不動産の価格を査定したり鑑定したりするだけかと思っていましたが、こうした土地の有効活用に関するアドバイスもしていただけるのですね。たいへん助かりました。祖母にもお世話になりました。事情は説明したつもりですが、どこまで理解していたかは分かりません。でも「いいよ、好きにおし」と言ってくれた祖母の顔は、子供の頃にアイスを買ってくれた時の顔と何ら変わりありませんでした。