賃貸等不動産の時価
「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」に係る
時価評価サポートサービスについて
賃貸等不動産①概要
■ 「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」の概要
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日刊不動産経済通信平成22年2月3日号
(ア) 背景
「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」および「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」においては、
① 平成20年8月に「金融商品に関する会計基準」が改正され、事実上事業投資と考えられるものも含め、全ての金融商品の時価等が注記対象とされたこと
② 国際財務報告基準(IFRS)では国際会計基準(IAS)第40号「投資不動産」において、投資不動産は、時価評価と原価評価の選択適用とされ、原価評価の場合に時価を注記することとしており、会計基準の国際的なコンバージェンスを図る必要があること
等から、賃貸等不動産に該当する場合には、平成22年3月31日以降終了する事業年度の年度末に係る財務諸表について賃貸等不動産の時価等の開示(時価を注記)が求められることになり、原則として不動産鑑定評価基準に則った時価算定を行うことが義務付けられました。
日本橋鑑定総合事務所では、
平成22年3月期以降の決算時に対応する
時価評価サポートサービスを提供させて頂きます。
(イ) 用語説明
1. 時価・・・
「時価」とは、公正な評価額をいい、通常、観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額をいいます。(賃貸等不動産会計基準第4項(1))
尚、賃貸等不動産に関する合理的に算定された価額は、「不動産鑑定評価基準」による方法または類似の方法に基づいて算定することとされています。
2. 賃貸等不動産・・・
「賃貸等不動産」とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益またはキャピタルゲインの獲得を目的として保有されている不動産(ファイナンス・リース取引の貸手における不動産を除く)をいいます。
尚、物品の製造・販売、サービス提供、経営管理に使用されている場合は、賃貸等不動産には含まれません。(賃貸等不動産会計基準第4項(2))
賃貸等不動産の具体的な範囲については、「賃貸等不動産の具体的な範囲」をご参照下さい。
(ウ) 適用時期
平成22年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されます。
(四半期財務諸表に関しては翌事業年度からの適用、中間財務諸表に関しては、平成22年4月1日以後開始する事業年度の中間会計期間から適用することを原則としています。)
また、当該事業年度以前の事業年度の期首からの適用も認められています。
尚、新たに注記することとなる事項は、会計基準の変更に伴う会計方針の変更には当たりません。
■ その他の不動産関連の会計基準との比較
日本基準においては、従来「取得原価主義」が広く採用されてきましたが、近年、国際会計基準とのコンバージェンスを図る観点から、「時価会計主義」への転換が進みつつあります。
不動産に関連する会計基準についても、ここ数年導入・改正が続いており、会計基準の転換期といえます。
| 賃貸等不動産の 時価等の注記 |
固定資産の減損 に係る会計基準 |
棚卸資産の評価 に係る会計基準 |
|
| 適用時期 | 平成22年3月31日以後終了する事業年度 | 平成17年4月1日以後開始する事業年度 | 平成20年4月1日以後開始する事業年度 |
| 対象資産 | 賃貸等不動産 | 固定資産 | 棚卸資産 |
| 評価額 | 公正な評価額 | 回収可能価額 (正味売却価額と使用価値のいずれか大きい方) |
正味売却価額 |
| 損失計上の判断基準 | 損失計上はない 時価の注記 |
割引前CFの総額が帳簿価額を下回る場合には損失計上 | 正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には損失計上 |
時価が簿価を下回っても簿価を切り下げる必要はありません。
賃貸等不動産②具体的な範囲
■ 賃貸等不動産の具体的な範囲
賃貸等不動産に該当する具体的な範囲は下表の通りです。まずは保有不動産が賃貸等不動産に該当するか否かを判定します。
| ①貸借対照表において投資不動産として区分されている不動産 | |
| 投資の目的で所有する土地、建物その他の不動産として、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第33条により、「投資不動産」として区分されている不動産。 | |
| ②将来使用が見込まれていない遊休不動産 | |
| 遊休不動産のうち将来の使用が見込まれていないものは、処分によるキャッシュフローしか見込めず、時価そのものが企業にとっての価値であるとして、賃貸等不動産に該当する。 | |
| ③賃貸されている不動産 | |
| ・オフィスビル、共同住宅、駐車場 | |
| ・第三者が運営しているホテル、ゴルフ場 | |
| ・開発中・再開発中の不動産、一時的に借り手が存在していない不動産 | |
| ・信託不動産 | |
| ・リース取引の対象となっている不動産 | |
| ※開示対象外:棚卸資産、自社工場、自社運営のホテル・ゴルフ場、一部賃貸のオフィスビル(賃貸部分の割合が低いもの)、ファイナンス・リース取引の貸し手における不動産等 | |
賃貸等不動産③時価開示の流れ
■ 賃貸等不動産の時価開示のフローチャート
時価開示(注記)のフローチャートです。
賃貸等不動産④算定方法
■ 時価算定が必要な場面とその算定方法
時価算定が必要な場面はフローチャートの①~③に当たりますが、それぞれ異なる算定方法が認められています。全ての賃貸等不動産について不動産鑑定士による鑑定評価が必要となるわけではありません。
一部簡便な方法も認められていますので、企業内部での評価も可能です。
具体的な算定方法については、「簡便な方法に基づいた算定価格」の求め方」をご参照下さい。
| ①賃貸等不動産の総額についての重要性を判断する際に賃貸等不動産の時価を算定する場合(フローチャート①) | ||
| 〈算定方法〉 | ||
| 簡便な方法に基づいた算定価格(一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標に基づく価額等)により賃貸等不動産の貸借対照日における時価を基礎とした金額と総資産の金額を比較して、賃貸等不動産の総額についての重要性を判断します。 →具体的な算定方法は「簡便な方法に基づいた算定価格」の求め方」へ |
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| ②賃貸等不動産の時価を財務諸表に注記するために賃貸等不動産の時価を算定する場合(フローチャート②③) | ||
| 〈算定方法〉 | ||
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フローチャート② 個々の賃貸等不動産について重要性があるケース |
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| A.自社における合理的見積り | ||
| B.不動産鑑定士による鑑定評価等 | ||
| フローチャート③ 個々の賃貸等不動産について重要性が乏しいケース | ||
| 簡便な方法に基づいた算定価格(一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標に基づく価額等)を時価とみなすことができます。 →具体的な算定方法は「簡便な方法に基づいた算定価格」の求め方」へ |
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賃貸等不動産⑤注記事項
■ 賃貸等不動産の注記事項
注記すべき主な内容は下記の4点です。
| ①賃貸等不動産の概要 | |||
| ②賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動 | |||
| ③賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法 | |||
| (ア)当期末における時価 (A or B) | |||
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A.観察可能な市場価格に基づく価額 |
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| B.市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額 | |||
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※「不動産鑑定評価基準」による方法または類似の方法に基づいて算定 |
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| (イ)算定方法 (A or B) | |||
| A.自社における合理的な見積り | |||
| B.不動産鑑定士による鑑定評価等 | |||
| ④賃貸等不動産に関する損益 | |||
○注記例
当社及び一部の子会社では、東京都その他の地域において、賃貸用オフィスビル(土地を含む。)を有しております。平成22年3月期における当該賃貸等不動産に関する賃貸損益は***百万円(賃貸収益は営業外収益に、主な賃貸費用は営業外費用に計上)、減損損失は***百万円(特別損失に計上)であります。
また、当該賃貸等不動産の連結賃貸借表計上額、当期増減額及び時価は、次の通りであります。
|
(単位:百万円) |
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|
連結貸借対照表計上額 |
当期末時価 |
||
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前期末残高 |
当期増減額 |
当期末残高 |
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1,000 |
30 |
970 |
1,200 |
(注1)連結貸借対照表計上額は、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額であります。
(注2)当期増減額のうち、主な増加額は不動産取得(***百万円)であり、主な減少額は減損損失(***百万円)であります。
(注 3)当期末の時価は、主として不動産鑑定士による鑑定評価額※であります。
※自社における合理的見積りを採用した場合には、
『 「不動産鑑定評価基準」に基づいて
自社で算定した金額(指標等を用いて調整を行ったものを含む。) 』
と記載することになります。
賃貸等不動産⑥CRE戦略への活用
■ CRE戦略への活用
賃貸等不動産の時価は「注記」という形で開示されますが、あくまで注記に過ぎず簿価を変動させる必要がないため、損益計算書や貸借対照表等の決算本体への影響はありません。
しかし、財務諸表に記載しないにしても、「時価」が開示され、簿価との開差(「含み益」や「含み損」など)が判明するため、個々の不動産の現在の価値を把握できることになります。
この開示された時価は、いわゆる保有不動産の「成績表」と言えるでしょう。
例えば、含み損を抱える不動産であれば、キャッシュフローの改善策を検討すること等を通じて、不動産価値を向上させることが可能となります。
不動産を単なる物理的生産財ではなく、経営資源として捉え、計画的かつ適切な対応を推進することにより、コストの適正化や機会損失の回避、リスクへの対応の実現を図ることがCRE戦略には不可欠です。
その入口として、不動産の時価評価が保有不動産の有効活用へつながっていくことが期待されます。
※CRE(Corporate Real Estate)戦略とは、企業が利用(所有・貸借)する不動産(企業不動産)について、「企業価値向上」の観点から経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方を示すもの。
‐国土交通省「企業不動産の合理的な所有・利用に関する研究会報告書(平成19年3月)より‐





