企業は、自社工場や店舗、自社ビル、投資用不動産など多くの不動産を所有しています。
そして、企業活動をおこなうなかで、所有不動産を親会社・子会社間や関連会社間で不動産売買をおこなったり、企業や経営者が資本金(現金)を拠出するかわりに所有不動産自体を現物出資して新しい法人を設立するケースが多くあります。
もちろん、企業間、企業・役員間における不動産売買の時には、適正価格の把握が必要不可欠です。
しかし、当事者間の恣意的な価格で取引される事も懸念され、また、例え適正価格で取引されたとしても投資家、債権者、税務署などから恣意的な価格と疑われてしまいます。
このような場合は、事前に不動産鑑定士の鑑定評価書を取得しておく必要があります。
適正な鑑定評価額を参考として取引を行うことで、揉め事もなく、税務調査に対する合理的な説明も可能となります。
ホテル、旅館は鑑定実務上、特殊物件に該当しますので、不動産鑑定にあたっては、高度な知識と経験が必要です。
当社が受託する場合に、特に重視するチェックポイントは次の通りとなります。
◇建築基準法関係
ホテル・旅館は通常、敷地や建物規模が大きく、築年数も経過しています。建築基準法関係で特に注意したいのは、建築確認及び検査済証等による遵法性調査です。また、建築から現在までに増改築を繰り返している場合も多く、当該部分の建築計画概要書による確認等が必要となります。市町村役場の建築課等の窓口において、過去の建築台帳で対象不動産をひとつずつ調査しますので、これだけで半日以上要します。
◇都市計画法関係
敷地について開発許可を取得しているかどうかを確認する必要があります。開発許可を取得している場合は、その証明となる許可年月日や許可番号を調査します。また、併せて開発登録簿や開発図面の写しを入手します。開発許可が必要な敷地規模にかかわらず許可を取得していない場合は、その理由を開発審査課などで聴取します。
◇図面
敷地が大きいこと、古い地域であること等の理由により、法務局備え付けの公図が正確に整備されていない場合が多くあります。公図を複数枚張り合わせて対象敷地を確定することも珍しくはありません。また、固定資産税課等では、課税目的のために地積図や土地宝典図を保存・整備している場合がありますので、併せて閲覧し、物件を確定していきます。特に、青地・赤地がある場合は、その払い下げの手続きも確認しておきます。
◇課税路線価、又は近傍標準宅地価格
固定資産評価証明書の入手が困難な場合には、固定資産税・都市計画税の税額を査定する必要があります。この計算の基礎となる課税路線価を調べます。前面道路に路線価が付されていない場合は、近傍標準宅地価格を調査します。その際、各市町村ごとに決定されている対象地域の固定資産税・都市計画税の税率も聴取します。
◇温泉掘削許可
温泉旅館の場合には、掘削許可を取得しているかどうか確認します。調査先は都道府県の保健所等が管轄しています。私有地であっても温泉開発は自由に認められるものではなく、自然環境保全や乱開発防止の目的から許可を取得する必要があります。
◇温泉利用許可
温泉を公共の浴用又は飲用に供する場合には、あらかじめ温泉利用許可を受けることが必要です。都道府県では温泉台帳などが整備されており、閲覧することで温泉利用許可の申請者が分かります。この調査によってオペレーター(運営者)の有無を確認することができます。
◇温泉源泉数
対象地域全体の源泉数を調査することによって対象地の希少価値がわかり、評価に影響を及ぼす重要な要素になります。また、新規掘削ができるかどうかも確認します。新しい源泉ができると他の旅館にも影響を及ぼすので、規制している場合もあります。地域の温泉組合などに問い合わせますが、組合長は地域の有名旅館の社長が兼任している場合があります。依頼者が金融機関やサービサーの場合は、所有者が関知せずに債権売却の話が進んでいるケースが一般的なので、対象物件の特定や調査背景などを迂闊に漏らさないように注意する必要があります。
◇旅館業法
旅館業法上の許可の取得の有無を調査します。許可申請者、許可日のほか客室数等も調査します。旅館内のパンフレットなどで客室数を把握できればよいのですが、稼動していない客室もありますので、許可上の客室数のほうが正確な場合があります。価格試算の段階で客室あたりの単価を検証するのに必要となります。
◇保安林等森林法関係
ホテル・旅館の背後に山林があり、それらが一体となって対象不動産を形成している場合があります。山林部分が保安林等に指定されている場合は、指定されている部分の確定、伐採・掘削制限等、建築上の制限を調査します。また森林計画図、森林台帳の閲覧により、森林の大まかな位置関係を知る手がかりとなります。
◇観光入込数、宿泊数
対象地域全体の観光入込数、宿泊数の過去3年間の推移を、都道府県、市町村、当該温泉地域、競合する温泉地域ごとに調査します。地域ごとの数字を比較検討することにより、観光客や宿泊客の現況や将来の動向を読み取る手がかりとなります。
◇競売物件調査
管轄地方裁判所で、ホテル、旅館の競売事例を調査します。競売3点セットとよばれる資料のなかに基準価格や地域の市況など参考になるコメント、情報、資料を入手できる場合があります。
◇対象物件内部のチェックポイント
宿泊客の立場となってサービス内容をチェックしていきます。
・ ロビーの印象、清掃状況、フロントの対応等
・ 客室内の状況、清潔感、建具の更新、客室からの外観景色、テレビ・エアコン等の設備状況
・ 大浴場の状況、清掃状況、清潔感、温泉の質・量等
・ 料理の質・量、サービス、対応など
◇損益計算書(P/L)分析
対象物件の損益計算書につき少なくとも3年分を分析します。ここでは売上高、仕入高、売上原価、売上総利益、人件費、販売費および一般管理費、償却前営業利益の推移を比較・検討します。
◇土地の相場
通常、土地の規模が大きいため、売却可能価格の算出は難しいところです。土地相場算出の手がかりとして、まず、地域内の標準的な画地の取引相場、マーケット情報を調査します。周辺の取引事例地の調査・分析、地元精通者への取材などをおこない、適正価格を査定していきます。
◇温泉の状況ヒアリング
温泉街としての観点から都道府県、市町村、温泉地域ごとの市場性、繁華性、当該地域と競合する温泉地域との優劣・特色などのエリアマーケットを調べていきます。例えば「客室数が少なく旅館自体は小さいものの、高級志向で有名な△△温泉が人気で、これまで団体客ニーズを中心としてきた当該地域である○○温泉の来客は少なくなっている」といったマーケット情報を入手していきます。
◇競合ホテルの洗い出し
当該ホテル・旅館と競合するホテルの名称、収容人数、客室数、サービスプランなどを調べます。
◇レポート事例
ソシアル店舗ビル、ショッピングセンター、郊外型ロードサイド店舗、病院・医療施設、公共施設などの評価は、不動産鑑定においてはいわゆる特殊物件評価と呼ばれ、とても難しい案件です。
これらの評価が必要となるシーンは実にさまざまですが、現在の地価動向の分析に加えて、対象物件がマーケットにおいてどのような位置づけなのか、想定される需要者は誰か、売買の前提は何か、賃貸借想定が可能な場合の賃料水準等の把握・分析が必要となるためです。
このような商業用不動産、特殊物件の評価では、外部の不動産鑑定士や不動産鑑定評価書の活用が非常に有意義となります。
昨今、不動産の証券化市場が進展し、その規模は拡大していました。
平成20年頃の、いわゆるファンドバブルが弾けて証券化プレーヤーは一部淘汰されつつありますが、不動産取引市場において一定のポジションを確立しています。
不動産鑑定は、適正な売買価格を、第三者として客観的に評価することにより、利益相反を回避し、不動産証券化市場全体の信頼性を確保するために、重要な役割を果たしています。
◇精度の高い収益価格の試算
証券化不動産においては、対象不動産から将来得られると期待されるキャッシュフローそのものが証券の裏づけとなります。
したがって、現在と将来におけるキャッシュフローの精細な分析が必要です。そのため、現在入居しているテナントの賃料水準が妥当かどうか、将来、テナントが退去したとき、すぐに次のテナントが見つかるかどうかなどの調査・分析が重要となります。これに伴い、評価手法としてDCF法による収益価格が重視されます。
◇証券化対象不動産の鑑定評価の必要性
投資家保護の観点から、客観的な評価をおこなうことができる専門的知識と豊富な経験がある中立的な不動産鑑定士による不動産鑑定が必要です。
◇不動産鑑定の効果は?
(1)投資家の投資判断の指標として
(2)運用者や所有者(オリジネーター)の意思決定の指標
(3)利益相反取引に対するチェック機能
(4)発行証券の基準価格の算定根拠
(5)証券格付機関による格付の参考資料
◇不動産鑑定を取得しておいた方がよい場面とは?
(1)証券化対象不動産の取得、売却時
(2)信託設定をおこなう場合に、信託設定時
(3)金融機関から借入れをおこなう時
(4)有価証券届出書に投資状況として対象不動産を記載する時
(5)運用期間中における対象不動産の時価を報告する時
◇必要となる資料は?
(1)証券化関係者等を示す証券化スキーム図
(2)物件案内図
(3)全部事項証明書、公図写し、建物図面等
(4)テナントおよび賃料等の一覧(レントロール)
(5)賃貸借契約書(各区画、駐車場、看板等)
(6)建物竣工図
(7)建築確認通知書写し、検査済証写し
(8)固定資産税・都市計画税の評価証明書
(9)損害保険料に関する資料
(10)エンジニアリング・レポート
(11)管理に関する契約書
(12)水道光熱費関係の収支に関する資料
(13)借地権がある場合、借地契約書、覚書等
(14)共同ビル、区分所有建物の場合、協定書、管理規約等
(15)境界確定に関する資料 など
個人所有の戸建住宅やマンションを売却、購入する場合は、不動産業者などに依頼をするのが一般的です。不動産鑑定書を取得して決断するといったケースはほとんどありません。
一方、企業が賃貸ビル・自社ビル用地・自社工場などを購入、売却する場合は、通常、不動産鑑定士の鑑定意見を取得することが一般的です。企業間の不動産売買では規模が大きく総額が嵩むことが多く、現在の地価動向を分析し、不動産取引のタイミングが適正かなど高度の情報が不可欠となるからです。不動産鑑定によって、事前に不動産のリスクを洗い出し、適正価格を把握することによって、売り急ぎや買い進みによる不利益が及ばないようにしなければなりません。
企業活動における不動産に係るシーンでは、外部の不動産鑑定士や不動産鑑定評価書の活用が非常に有意義となります。
業務拡張や新規事業の立ち上げ、業務縮小など、企業が不動産を活用するシーンは多々あります。
はじめから売却ありきであれば不動産業者に媒介依頼することも可能ですが、それだけが有効活用の手段ではありません。例えば、担保に供したり現物出資するなど、企業の選択肢は多岐にわたるものであり、それぞれのメリット・デメリットを判断したうえで最終的な経営判断がなされるものです。
いずれの選択肢を採るにしても、所有不動産の有効活用にあたっては、まず不動産の資産価値を把握する必要があります。
このような場合には、通常、不動産鑑定士の鑑定意見を取得することが一般的です。現在の不動産市況を分析し、不動産の個別的要因に基づく適正評価を行うためには、高度な情報が不可欠となるからです。
不動産鑑定によって事前にリスクを洗い出し、適正価格を把握することが、所有不動産の有効活用のための経営判断をおこなう際に重要な役割を果たします。
企業活動における不動産に係るシーンでは、外部の不動産鑑定士や不動産鑑定評価書の活用がとても有意義となります。
◇ノンリコースローンとは?
ノンリコースローンとは、不動産そのものの収益力を担保に融資することをいいます。
不動産価値が下落して融資の元本を割っても、原則として、担保不動産以外の資産での返済を求められることはありません。
この場合、不動産所有者の信用力(たとえば倒産)から法的分離するためにSPCを設立し、融資を受けるのが通常となっています。
◇ノンリコースローンのメリット
①借り主の資産やクレジット(信用)に依存せずに、仮に借り主の信用力が低くても、不動産次第で融資が可能
②担保不動産のみを対象とした貸し出しとなるため、借り主の自己資金部分に余裕が生まれ、次案件につながりやすい(リピーターになりやすい)
などがあげられます。
◇ノンリコースローンのデメリット
返済の義務が保証人に及ばず、債権の保全は担保不動産のみとなる
精度の高い不動産評価を実施すること、及び充分な担保掛目をとることでデメリットをカバーする必要があります。
◇鑑定評価には高い信用が求められる
担保となるのは、不動産のみとなるため、金融機関が与信を判断するポイントは“対象不動産の収益力のみ”となります。
したがって、まず担保となる不動産に対してデューデリジェンスが必要となります。
ローン実行までの流れは次の通りです。
1.不動産デューデリジェンス・担保評価
↓
2.正式な不動産鑑定
↓
3.リスクの透明化をはかる
| 安定したキャッシュフロー | 元利支払の原資となりますので、安定したキャッシュフローが求められます。また、物件の評価額を持続するためにも必要です。 |
| 物件の流動性が高いこと | デフォルトが生じたときは、担保物件を売却して回収することになるため、流動性が低い場合は処分に手間と時間がかかります。 |
| 借り手の信頼性 | 担保物件の価値に着目して融資するので、担保物件を適正に維持管理できることが必要となります。 |
| 物件の汎用性 | テナントが退去した場合にすぐに新しいテナントが見つかるかどうか等を調査します。 |
相続もまた、不動産と切っても切れない関係にあります。被相続人が現金のみを遺してくれれば良いのでしょうが、土地や建物は、ケーキのように等分すればおしまいというわけにはいきません。分割できるほど広い土地とは限りませんし、被相続人の誰かが住んでいる場合もあります。
当社でも数多くの相続案件を扱ってきましたが、印象に残っているエピソードをご紹介しようと思います。
◇整形と不整形、あなたならどちらを選ぶ?
とある路線商業地に、旗竿状の土地がありました。とはいえ、通常の旗竿地のように路地状部分を擁する使い勝手の悪い形状ではなく、間口も十分あり、旗竿部分は若干気になる程度。また、分割してもそれぞれが問題なく利用できる広さでした。しかし、この「若干」が曲者となります。いざ分割しようとすると、一方の土地がきれいな長方形地、もう一方が旗竿地(不整形地)になってしまうのです。
これでは明らかに不公平、ということで、単純に面積で等分するのではなく、旗竿地の面積を少し多めにしようという分割案が出されました。
さて、通常、更地の鑑定評価においては、取引事例比較法と収益還元法という二つの手法を用いて価格を決定します。各手法の説明はここでは省略しますが、取引事例比較法は土地の個別性が重視され、収益還元法は文字通り収益性が重視されるという特徴があります。
取引事例比較法では、旗竿地が不整形であるため単価が低く、長方形地の1.1倍程度の面積が妥当であると査定されました。分割案通りです。
ところが、分割案を基に収益還元法を適用すると、旗竿地の方が面積が大きいため、容積を消化することができ、旗竿地の方が高く査定されてしまうのです。
これが一般住宅地であれば、収益価格は参考程度にとどまるのですが、対象地は住宅地とも商業地ともいえない微妙な立地条件にあり・・・。
結局、面積比1.05倍程度という、ほぼ等分に近い数字で評価せざるを得ませんでした。その後、相続人同士でどちらを取るか喧々囂々・・・だったかは存じ上げません。
不動産の経済価値は日々変動しています。しかし、株式や為替と異なり確固とした市場が存在しないため、多くの取引が当事者の相場観によってなされているのが実情です。
賃料は、不動産の収益性を決定づける核といえます。にも関わらず、言ってみれば「ざっくりと」設定された新規賃料に長期間縛られることになります。この、ひとたび決定されてしまうと増(減)額が難しいという賃料の特徴を、「賃料の遅行性」といいます。。
但し、賃料を改定しようと思っても、いきなり裁判に持ち込まれることはありません。まずは当事者間で話し合い、折り合いがつかなかった場合は簡易裁判所に調停を申し立て(調停前置主義)、調停が不調に終わった時、はじめて裁判になります。
裁判官は不動産の専門家ではないので、鑑定人として不動産鑑定士を選任して評価を行わせます。多くはこの鑑定評価額によって決定されますが、不動産の用途や契約内容が多様化する昨今、鑑定人の算出した賃料が必ずしも実態を反映しているとはいえない場合もあり、話し合いや調停の段階から鑑定評価を依頼されるケースも増えています。
企業結合日等における財務諸表を作成するための不動産の評価は、当該不動産の資産の分類に応じて、前述の ①固定資産の減損に係る会計基準、②棚卸資産の評価に関する会計基準、③賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準 に従って時価算定が行われることになります。
会計基準は刻々と変化しているため、常に知識を更新し、各専門家と綿密な連携を取ることが重要となります。